上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消せます。
惑星科学の研究者を志し博士号を取得してまで、何故民間の、それも広告会社に就職するのかとよく聞かれます。聞かれたら説明するようにしていますが、全ての人に説明出来る訳ではないので、ブログに書いておきます。

「惑星科学は最早、人生の大半を費やして取り組みたいものでは無くなってしまった」

こと。そしてその代わりに、

「人間の心を動かし行動を変えるような、コミュニケーションをつくりたい」

と思うようになったこと。
これが、私が新しい分野に進もうと考えた理由です。


「コミュニケーションをつくりたい」という考えに到達するまでの経緯

・科学が1番面白いと思い、大学院に進学
学部生の頃、科学が一番面白いと思っていました。自然現象の背景にある法則について考え、新たな側面を発見し、先人達が積み上げてきた学問に新たなページを加える。それが自分にとって一番面白くて、やり甲斐があると信じていました。ニュートンのものとされる言葉を借りれば、「巨人の肩に乗って遠くを見る」ことこそ自分がやりたい事だと思っていたのです。

そんな私は、(分野の細目こそ多少迷いはしたものの)あまり深刻に悩まずに大学院に進学しました。分野は惑星科学。はじめから博士課程に進学するつもりでした。

・大学院にて、「感情」の重大さを実感
きっかけは、そうして進学した大学院での体験にありました。「(惑星科学の)研究をするぞ」と鼻息荒く進学した先で、思いがけず「人の感情」に目を向けざるを得ない事態に数多く遭遇しました。自分で言うのも何ですが、タフな経験をしたと思います(誤解の無いように断っておくと、私が博士課程で所属していた研究室での話ではありません。博士課程の研究生活はとても幸せなものでした)。多くの科学者が生活においては感情に支配されている、という事実に私は驚きました(そんなの当たり前だろうと思われる方も多いかもしれませんが、私の頭の中の科学者像は、もう少し冷静な姿だったのです)。

いくつかの経験を経て、人にとっての「感情」の重大さを私は実感しました。

・「科学」から「社会」に視線が移る
平行して、
 大学は今より「良く」するにはどうすればよいか?
 科学者コミュニティをより「良く」には、どうすればよいか?
そしてもっと広げて、
 社会をもっと「良く」するには、どうすればよいか?
と考えるようになりました。

勿論、これは非常に漠然とした問題意識です。この問いに簡単に答えが出て、理想的な改善策がぽんと出るなら、世界はとっくに理想郷になっているでしょう。

しかし少なくとも、自分が脳の大部分と人生の大半を使って考えたいことが、惑星科学そのもので無くなったのは確かでした。

今の社会を、もう少し生きやすい、幸せなものにしたい。
そのために社会に参加して活動したい、と考えるようになりました。
(科学者・研究者が社会に参加していない、と主張したい訳ではありません。ただ、私にとっては物足りませんでした。)

巨人の肩に乗って遠くを見るより、「巨人の指先を動かして、目の前の現実に影響を与えたい」と思うようになりました。

・「最後の課題」はコミュニケーションだと考えた
社会に出るといっても、「自分がやりたい事」と「社会から求められている事」の合わさるところを探す必要があります。

 経営コンサルタントが良いだろうか?
 技術者だろうか?
 社会起業だろうか?
 etc…
考えるなかで、大学院生活で実感した「感情」の重大さに思い至りました。

世界には、既に存在する素晴らしい物や活動(科学研究から社会起業など様々)があります。しかし、どんなに正しく素晴らしい活動でも、(その活動自体が莫大な利益を生むもので無い限り)多くの人々から「関心を持たれ」「応援され」なければ続けられません。また、問題を解決する画期的な仕組みをつくったとしても、「なんか嫌」という受け手側の感覚を乗り越えられないだけで、その仕組みが活かされない事もあるでしょう。

社会の中でどんな「良い事」をするにしろ、立場が違う人々の間の「コミュニケーション不全」を解消する仕事が必要だろう。そして、自分はその仕事をしたい。私はそう考えました。

・広告会社との出会い
もともとは、友人が就職した業界として知りました。はじめは、CMとか作るのかなー、といった程度の認識でした。

まだ科学者になりたいと思っていた頃から、科学コミュニーション活動(アウトリーチなど)に参加していた私は、細々と社会心理学や広報・PR・広告といったものについて細々と勉強していました。その過程で、「社会の課題を解決する」ための「コミュニケーション」を「大きな規模で」つくるという一面が広告会社にあると知りました。また、経済活動の中での広告コミュニケーションの背景には、観察に基づく分析や論理的な思考が存在する事も知りました。

広告会社であれば、今の自分の「やりたい事」と「できる事」が、社会や企業から「求められている事」と重なるのではないか。そして一から起業したりフリーで活動するより、「より早く」「大きなスケールで」コミュニケーションをつくる能力を鍛えられるのではないか。

そう考えて新卒採用に応募することにしました。博士課程(それも理学系)からの応募者は異質な存在だったと思いますが、有り難いことに採用して頂けました。



以上が、私の進路変更の顛末です。かなり整理して書いてしまいましたが、実際には様々な理由の重ね合わせで進路変更を決断した面もあります。上記の話にストレートに乗ってこない理由もあります。

しかし少なくとも、思い残すところの無い決断が出来たと感じています。研究を続けている自分より、仕事をしている自分を想像する方が、圧倒的にワクワクします。

民間の大企業では、私がやりたいと思う事がすぐ出来る訳ではないでしょう。が、「自分が取り組みたい事」と「会社が求める事」の擦り合わせに、まずは取り組んでみたいというのが今の私の考えです。

Secret

TrackBackURL
→http://toyotakenori.blog79.fc2.com/tb.php/182-9ee7e692